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事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)について解説

事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)について解説

中小企業や小規模事業者が、事業承継やM&Aを行う際に利用できる補助金「事業承継・引継ぎ補助金」について解説します。事業承継・引継ぎ補助金は「経営革新事業」、「専門家活用事業」、「廃業・再チャレンジ事業」の3事業で構成されています。今回は経営資源の引継ぎに際し、専門家の費用などの一部を補助する「専門家活用事業」について解説します。

※「経営革新事業」について解説についてはこちらの記事を参照ください。

※2023年9月15日に開示された7次公募の情報を基に解説しています。

事業承継・引継ぎ補助金「専門家活用事業」の趣旨・目的

事業承継・引継ぎ補助金「専門家活用事業」は、後継者不在や経営力の強化など、経営資源引継ぎ(M&A)のニーズを持つ中小企業に対し、経営資源引継ぎに係る専門家費用等の一部を補助することによって、地域の需要や雇用の維持・創出を通じて国の経済を活性化させることを目的としています。

「専門家活用事業」でいうところの 「専門家」とは

事業承継・引継ぎ補助金「専門家活用事業」では『M&A支援機関登録制度』に登録されている専門家(以下「M&A支援機関」)への支払いのみをFA・仲介業者への委託費として補助対象経費としています。中小企業者が安心してM&Aに取り組める基盤を構築するためです。

 

M&A支援機関とは

M&A支援機関とは、中小企業庁が中小企業を当事者とする M&Aや事業承継を推進するために「中小M&Aガイドライン」における支援機関のうち、中小企業に対してフィナンシャル・アドバイザー業務又は仲介業務を行う支援機関のことを指します。「M&A 支援機関登録制度に登録されたFA・仲介業者」については、M&A支援機関登録制度事務局HPで公表されています。申請の際にFA又はM&A仲介業者の利用を検討している場合は必ず参照するようにしてください。

参考:M&A支援機関登録制度事務局ホームページ「登録支援機関データベース」

 

 M&A支援機関の種類

M&A支援機関には、FA業務や仲介業務を専業としていない者も含まれます。例えば仲介業務を行う金融機関などがこれに該当します。一方で、FA業務や仲介業務を行わずデュー・ディリジェンス業務のみを専門とする士業などの専門家は対象外となります。

・M&A専門業者

仲介、フィナンシャルアドバイザーなど

・金融機関

都市銀行、地方銀行、信用金庫・信用組合、証券会社、保険会社など

・商工団体

商工会・商工会議所など

・士業専門家

税理士、公認会計士、中小企業診断士、弁護士、司法書士、社会保険労務士、行政書士など

 

支援類型について

事業承継・引継ぎ補助金「専門家活用事業」は「買い手支援型(Ⅰ型)」と「売り手支援型(Ⅱ型)」の2つに分類されています。同一の経営資源引継ぎにおいて、「買い手支援型(Ⅰ型)」と「売り手支援型(Ⅱ型)」それぞれについて1件の申請が可能です。また、過去に専門家活用型(事業)で補助金を受けた実績がある場合、どの類型においても交付申請はできませんので注意が必要です。

 

買い手支援型(Ⅰ型)

事業再編・事業統合において株式や経営資源の譲受を予定している中小企業等を支援する類型です。

売り手支援型(Ⅱ型)

事業再編・事業統合に際して株式や経営資源の譲渡を予定している中小企業等を支援する類型です。

・売り手支援型における共同申請について

売り手支援型(Ⅱ型)において、株式譲渡を通じて経営資源の引継ぎを行う際に、支配株主や株主代表が補助金の申請を行う(補助対象となる経費を負担する)場合は、対象会社と株主との共同申請が必要です。共同申請を行わない場合、株主が負担した経費は補助対象外となるため注意してください。

補助対象者

補助対象者は、下記1~11の要件を満たし、かつ後述の「経営資源引継ぎの要件」を満たす最終契約書の契約当事者(予定含む)です。ただし、売り手支援型(Ⅱ型)における株式譲渡については、異動する株式を発行する中小企業(以下「対象会社」)、対象会社と共同申請する対象会社の議決権の過半数を有する株主、または対象会社の議決権の過半数を有する株主の代表者とします。

1 日本国内に拠点又は居住地を置き、日本国内で事業を営む者

※個人事業主…「開業届出」「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出した時点から5年が経過、かつ税務署の受領印が押印された確定申告書Bと所得税青色申告決算書の写しを提出できることが条件

※法人…申請時点で設立登記および3期分の決算及び申告が完了していることが条件

2 補助対象者又はその法人の役員が暴力団等の反社会的勢力でないこと。また、反社会的勢力との関係を有しないこと
3 補助対象者が法令遵守上の問題を抱えていないこと
4 事務局から質問及び追加資料等の依頼があった場合は適切に対応すること
5 事務局が、交付申請その他各種承認や結果通知に関わる事項に修正を加えて通知することについて同意を出来ること
6 補助金の返還、その他事由が生じた場合、本補助金の交付に関連して負担した各種費用について事務局がいかなる理由でも負担しないことに同意すること
7 経済産業省、独立行政法人中小企業基盤整備機構から補助金の指定停止措置や指名停止措置が講じられていないこと
8 補助金の申請、利用、事業報告提出時などに提供された個人情報を含むすべての情報について、これらの情報が統計的処理を経て匿名性が確保された状態で公表される場合や、利活用される可能性があることに同意すること
9 事務局が求める補助対象事業に係る調査やアンケート等に協力できること
10 (FA・M&A 仲介費用を補助対象経費とする場合)事業承継・引継ぎ補助金事務局がM&A支援機関登録制度事務局に対して情報を提供すること、補助事業対象者の詳細に関して、登録されたFA・仲介業者からM&A支援機関登録制度事務局へ実績報告が行われることに同意すること
11 FA・仲介業者またはFA・仲介業者(法人)の代表者が、補助対象者または補助対象者(法人)の代表者と同一人物でないこと

対象となる中小企業者等の定義

業種

定義

製造業その他 ・資本金の額又は出資の総額3億円以下の企業

・常時使用する従業員の数が300人以下の企業若しくは個人事業主

卸売業 ・資本金の額又は出資の総額が1億円以下の企業

・常時使用する従業員の数が100人以下の企業若しくは個人事業主

小売業 ・資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の企業

・常時使用する従業員の数が50人以下の会社若しくは個人事業主

サービス業 ・資本金の額又は出資の総額が 5 千万円以下の企業

・常時使用する従業員の数が100人以下の企業若しくは個人事業主

※社会福祉法人、医療法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人、学校法人、農事組合法人、組合(農業協同組合、生活協同組合、中小企業等協同組合法に基づく組合等)は中小企業者等には含まれません。

小規模企業者の定義

業種

定義

製造業その他 従業員の数が20人以下の企業若しくは個人事業主
商業(小売業、卸売業)・サービス業 従業員の数が5人以下の企業若しくは個人事業主
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 従業員の数が20人以下の企業若しくは個人事業主

経営資源引継ぎの経営資源引継ぎの要件

補助対象事業となる経営資源引継ぎは、補助事業期間内に、経営資源を譲渡する者(以下「被承継者」)と譲受ける者(以下「承継者」)の間で事業再編・事業統合が着手(注1)もしくは実施(注2)される予定であること、または廃業を伴う事業再編・事業統合等が行われる予定(注3)であることが条件です。ただし、承継者と被承継者による実質的な事業再編・事業統合が行われていない場合(例:事業再編・事業統合を伴わない物品・不動産の単なる売買、グループ内事業の再編、親族内事業承継等)は、補助対象外と判断されますので、申請の際は改めての事業内容確認が必要になります。

 

(注1)着手時点について

専門家等との補助対象経費に係る契約締結日が着手時点となります。

(注2)実施期間について

補助事業期間内に事業再編・事業統合に関する相手方との基本合意書または最終契約書が締結されることが必要です。補助事業期間内にクロージングが完了した補助事業のことを指し、補助対象経費については原則として補助事業期間内に契約・発注され、支払われた経費が対象です。

(注3)廃業費について

廃業費に関しては、補助事業期間内に廃業に関わる事業再編・事業統合が計画されていることが必須です。事業の一部を廃業する場合、該当する部分の廃業が補助事業期間内に実施されること、その実施事実が実績報告時に確認できることが必要になります。

常時使用する従業員1名以上の引継ぎが必要

補助対象事業の業種が不動産業の場合は、原則として常時使用する従業員1名以上の引継ぎが行われることが必要です。また、不動産業を含むすべての業種で、常時使用する従業員が1名以上引き継がれていない場合、経営資源引継ぎの要件を満たしていないと判断される場合があります。

有機的一体としての経営資源の譲受・譲渡事実が必要(事業譲渡の場合)

事業譲渡の際、有機的な一体としての経営資源(設備、従業員、顧客など)の譲受・譲渡事実が確認できない場合は経営資源引継ぎの要件を満たしていないと判断されることがあります。よって、有形資産(物品・設備など)のみ、または無形資産(ブランド・ノウハウなど)のみの譲渡は原則として対象外となるため注意が必要です。

交付申請不可事例

交付申請不可事例
1 事業再編・事業統合後に承継者が保有する対象会社又は被承継者の議決権(吸収分割、事業譲渡の場合は除く)が過半数にならない場合
2 事業再編・事業統合前に承継者が保有する対象会社又は被承継者の議決権が過半数の場合
3 被承継者又は被承継者の株主と、承継者との関係が本人または同族関係者である場合
4 被承継者又は対象会社と、承継者との関係が支配関係のある法人である場合
5 経営資源引継ぎ形態につき事業譲渡を選択しているが、実態として単なる不動産の売買のみにとどまり事業譲渡を伴わない場合

単なる不動産売買とみなされる事例

補助対象事業が、単なる不動産売買に該当する場合(下記事例参照)には、事業再編・事業統合に伴う経営資源の引継ぎの対象外となりますので注意が必要です。

単なる不動産売買の例
1 最終契約書として不動産売買契約書のみを締結する場合
2 不動産及び取引契約の引継ぎのみを行い、常時使用する従業員1名以上の引継ぎが伴わない場合
3 事業を営んでいない個人または個人事業主から不動産のみを買収する場合
4 空き家(廃墟、相続物件等を含む)のみを買収または売却する場合
5 賃貸物件(賃貸物件に紐づく契約を含む)のみを買収または売却する場合
6 株式、事業及び営業権の譲渡を伴わない物件の賃借権譲渡の場合
7 補助対象経費が不動産売買に関連する経費のみである場合

 

補助事業期間 ※7次公募

補助事業期間は、交付決定日から2024年6月30日までとします。この期間内に基本合意書の締結、最終契約書の締結、クロージングなどを行う必要があります。

※事業再編・事業統合等を進める際の専門家との委託契約は、補助事業期間前に締結されていても認められることがあります。

契約等の時期別「FA・M&A 仲介費用における成功報酬の補助対象経費」の該当可否

ケース 実施期間

補助対象経費該当

補助事業期間開始前 補助事業期間 補助事業期間終了後
専門家契約、最終契約、成功報酬支払
専門家契約 最終契約、成功報酬支払
専門家契約、最終契約 成功報酬支払 ×
専門家契約、最終契約 成功報酬支払 ×

※中間報酬に関しては「成功報酬」を「中間報酬」、「最終契約」を「基本合意契約」に読み替えます。

専門家契約

FA・M&A仲介業者と、FA・M&A仲介費用に関する委託契約書を締結します。

最終契約

FA・M&A仲介業者とFA・M&A仲介費用に係る委託契約書を締結し、支援を受けた上で交渉相手と最終契約書を締結します。

成功報酬支払

最終契約および最終契約に基づく取引の実行(クロージング)に伴う成功報酬を支払います。

補助対象経費 

補助事業を実施するために必要な経費のうち、下記1~3全ての要件を満たすものが補助対象経費となります。

1 使用目的が補助対象事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
2 補助事業期間内に契約・発注を行い支払った経費

―補助対象経費の契約・発注が交付決定日以降2024 年6月30日までの間であり、支払いまでが同期間内に完了している経費のこと

―委託費のうちFA・M&A 仲介費用に関しては「M&A 支援機関登録制度」に登録された登録 FA・仲介業者による FA 又は M&A 仲介費用のみが対象経費

―委託費のうちFA・M&A仲介費用の基本合意に基づく「中間報酬」に関しては、補助事業期間内に「選任専門家と契約書を締結」または「交渉相手と基本合意書を締結」を実施し、その期間内に支払った経費が補助対象経費となる

―委託費のうちFA・M&A仲介費用の基本合意に基づく「成功報酬」に関しては、補助事業期間内に「選任専門家と契約書を締結」または「交渉相手と最終契約書を締結」を実施し、その期間内に支払った経費が補助対象経費となる

3 補助事業期間終了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額・支払い等が確認できる経費

補助対象経費の概要

補助対象となる経費は「買い手支援型(Ⅰ型)」「売り手支援型(Ⅱ型)」ともに下記内容となります。

詳細は「公募要領『14.2.実績報告に必要な書類』」にて確認してください。

補助対象経費の区分 対象経費、注意事項
委託費 FA 業務又は仲介業務に係る「着手金」「マーケティング費用」「リテーナー費用」「基本合意時報酬」「成功報酬」「価値算定費用」「デューデリジェンス費用(プレPMI費用を含む)」はM&A登録専門家への支払のみが補助対象(DD業務のみの場合は登録は不要)
謝金 補助事業実施に必要な専門家への謝金(士業及び大学博士・教授等に限定される)
旅費 補助事業実施に必要な出張に係る経費(交通費、宿泊費)
外注費 補助事業実施に必要な業務の一部を第三者に外注(請負)する際の経費
システム利用料 M&Aマッチングサイトなどのプラットフォームを利用した際の登録料、利用料、成約手数料
保険料 ・買い手支援型(Ⅰ型)…買い手手配の表明保証保険に係る保険料

・売り手支援型(Ⅱ型)…売り手手配の表明保証保険に係る保険料

廃業費(廃業支援費) 廃業に係る登記申請手続き等に伴う、司法書士・行政書士への申請資料作成経費
廃業費(在庫廃棄費) 事業所や事業の商品在庫について、専門業者等を利用して処分する際の経費
廃業費(解体費) 事業所や事業において所有していた建物・設備機器等を解体する際の経費
廃業費(原状回復費) 事業所や事業において借地や借家、設備機器等を返却する際の原状回復にかかる経費
リースの解約費 ファイナンスリース取引の解約に伴う解約金・違約金については補助対象経費外
移転・移設費用 補助事業実施における移転・移設等にかかる費用

※補助事業期間内に経営資源引継ぎが実現しない場合、実績報告時に補助対象となる経費が一部限定されます。

補助率・補助上限額

補助上限額や補助率は下記のように設定されています。補助下限額は50万円であり、その金額を下回る申請は認められません。

類型 補助率 補助下限額 補助上限額 上乗せ額(廃業費)
買い手支援型 2/3以内

 

50万円

 

 

600万円以内

※2

 

+150万円以内

※3

売り手支援型 1/2または2/3以内

※1

※1 売り手支援型(Ⅱ型)において補助率が2/3に引き上がる条件

売り手支援型(Ⅱ型)での申請者について、以下のいずれかの条件に該当する場合は、補助率が1/2以内から2/3以内に引き上げられます。

 

1 物価高等の影響により、営業利益率が低下している場合

2 営業利益または経常利益が赤字の場合

 

※2 補助上限額が300万円以内になる場合

補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合(補助対象事業において、クロージングしなかった場合)、補助上限額は300万円以内となります

経営資源の引継ぎが補助事業期間内に実現しなかった場合

廃業費に関しては、経営資源の引き継ぎが補助事業期間内に実現しなかった場合補助対象外となります。また、廃業費の併用申請における補助率は、事業費の補助率(2/3以内、または1/2以内)に従います。

まとめ

売り手、買い手双方にとって大きな財務的負担となる専門家への支払いですが、この補助金を活用することで金銭的なリスクを軽減できます。また、専門家活用事業は経営革新事業との同時申請も可能です。事業承継の内容に応じて申請内容を調整することをお勧めします。事業計画の審査では、「計画が補助事業期間内に適切に実施されるか」「譲渡(買収)の目的・必要性、譲渡(買収)による効果及び地域経済への影響」などの観点からが評点されます。交付申請に向けた準備ではこれらの審査基準を理解し対応することが重要です。