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事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)について解説

事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)について解説

中小企業や小規模事業者が、事業承継やM&Aを行う際に利用できる補助金「事業承継・引継ぎ補助金」について解説します。事業承継・引継ぎ補助金は「経営革新事業」、「専門家活用事業」、「廃業・再チャレンジ事業」の3事業で構成されています。今回は、M&Aを通じて事業を譲渡できなかった中小企業者等の株主、個人事業主が新たなチャレンジを行うための支援「廃業・再チャレンジ事業」について解説します。

※2024年1月9日に開示された8次公募の情報を基に解説しています。

事業承継・引継ぎ補助金「廃業・再チャレンジ事業」の趣旨・目的

「廃業・再チャレンジ事業」は、M&Aによる事業譲渡が出来なかった中小企業者等を対象に既存事業を廃業する際の経費の一部を補助します。この事業の目的は、申請者が新たな取組を行うことで、地域内の新しい需要を創出、雇用を生み出すための環境を整えることにあります。

補助対象となる廃業・再チャレンジ

本事業で補助対象者が行う「廃業・再チャレンジ」の具体的な内容は下記を指します。

事業承継またはM&Aで事業を譲り受けた後の廃業

事業承継を通じて事業を譲り受けた中小企業者等が、新しい取り組みを開始する際に、既存の事業や譲り受けた事業の一部を廃業する場合。

経営革新事業との併用になります。

M&Aで事業を譲り受けた際の廃業

M&Aを通じて事業を譲り受ける中小企業者等が、事業を譲り受ける過程で既存事業や譲り受けた事業の一部を廃業する場合。

専門家活用事業との併用になります。

M&Aで事業を譲り渡せなかった廃業・再チャレンジ

M&Aにより事業を譲り渡せなかった中小企業者等が、地域に新たな需要を創出し雇用を生み出すため新しいチャレンジを行うために既存事業を廃業する場合。

※単独申請になります。

再チャレンジ申請(単独申請)における共同申請

再チャレンジ申請(経営革新事業、専門家活用事業との併用を行わず廃業・再チャレンジ事業を単独で申請する場合)は、廃業予定の中小企業、またはその対象会社の議決権の過半数を持つ株主、または該当株主の代表者と共同で申請する必要があります。

補助対象者

補助対象者は、下記1~10の要件を満たし、かつ後述の「廃業・再チャレンジの要件」を満たす中小企業者等です。また、経営革新事業や専門家活用事業との併用する場合は、経営革新事業や専門家活用事業の要件を満たす必要があります。また「M&Aで事業を譲り渡せなかった廃業・再チャレンジ」の場合は、11、12の要件を満たすことが必要です。

1 日本国内に拠点又は居住地を置き、日本国内で事業を営む者

※個人事業主…青色申告者で、税務署の受領印が押印された確定申告書Bと所得税青色申告決算書の写しを提出(税務申告・届出を電子で行っている場合、受付確認ができるメール詳細(受付結果)を追加提出

※外国籍…「国籍・地域」「在留期間等」「在留資格」「在留期間等の満了の日」「30条45規定区分」項目が明記された住民票を添付すること

2 地域経済に貢献している、または貢献しようとしている中小企業者等であること。地域の雇用を維持・創出すること、地域固有の技術や特産品を用いて地域を支える活動を行うこと
3 補助対象者またはその法人の役員は、暴力団等の反社会的勢力ではなく、反社会的勢力との関係も有していないこと。さらに、反社会的勢力からの出資やその他の形での資金提供を受けていないこと
4 補助対象者が、法令遵守上の問題を抱えていないこと
5 補助対象者は、事務局からの質問や追加資料の依頼に対して適切に対応すること
6 補助対象者は事務局が必要と認めた場合、事務局が補助金の交付申請その他事務局による承認や結果通知に関連する事項に修正を加えて通知することに同意すること
7 補助対象者は、補助金の返還などの事由が生じた場合、補助金申請や交付に関連して負担した各種費用について、事務局がどのような事由であっても負担しないことに同意すること
8 補助対象者は、経済産業省及び独立行政法人中小企業基盤整備機構から補助金指定停止措置又は指名停止措置が講じられていないこと
9 補助金の申請、利用、事業報告提出時などに提供された個人情報を含むすべての情報について、これらの情報が統計的処理を経て匿名性が確保された状態で公表される場合や、利活用される可能性があることに同意すること
10 事務局が求める補助対象事業に係る調査やアンケート等に協力できること
11 M&A(事業の譲り渡し)に着手したものの、成約に至らなかった者

※申請締切時点で、事業の譲り渡しに着手してから6か月以上経過している者

12 廃業後、再チャレンジする事業に関する計画を作成、認定支援機関の確認を受け提出すること

対象となる中小企業者等の定義

業種 定義
製造業その他 ・資本金の額又は出資の総額3億円以下の企業

・常時使用する従業員の数が300人以下の企業若しくは個人事業主

卸売業 ・資本金の額又は出資の総額が1億円以下の企業

・常時使用する従業員の数が100人以下の企業若しくは個人事業主

小売業 ・資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の企業

・常時使用する従業員の数が50人以下の会社若しくは個人事業主

サービス業 ・資本金の額又は出資の総額が 5 千万円以下の企業

・常時使用する従業員の数が100人以下の企業若しくは個人事業主

※社会福祉法人、医療法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人、学校法人、農事組合法人、組合(農業協同組合、生活協同組合、中小企業等協同組合法に基づく組合等)は中小企業者等には含まれません。

廃業・再チャレンジの要件

併用申請を行う場合、補助事業期間の終了日までにM&Aまたは廃業が完了していることが必要です。また、廃業に伴い、以下の1~3を行っている、または行う予定であることが求められます。再チャレンジ申請の場合も補助事業期間の終了日までに廃業が完了していることが必要です。さらに、廃業に伴い以下の4を行っている、または行う予定であることが必要です。

1 事業承継・M&A後の新たな取り組み

経営革新事業の補助対象事業に該当し、経営革新事業で採択されていることが条件です(補助対象事業に該当するが採択されていない、また別の補助金に採択されているケースにおいての申請は不可となります)

2  M&Aによって他者から事業を譲り受けること(全部譲渡・一部譲渡含む)

専門家活用事業の補助対象事業に該当し、専門家活用事業で採択されていることが条件です(補助対象事業に該当するが採択されていない、また別の補助金に採択されているケースにおいての申請は不可となります)

3  M&Aによって他者に事業を譲渡すこと(全部譲渡・一部譲渡含む)

専門家活用事業の補助対象事業に該当し、専門家活用事業で採択されていることが条件です(補助対象事業に該当するが採択されていない、また別の補助金に採択されているケースにおいての申請は不可となります)

4 2020年以降に売り手としてM&Aへの着手、6か月以上取組んでいること+廃業後に再チャレンジ

「M&Aへの着手」の要件は下記の通りです。

1 事業承継・引継ぎ支援センターへの相談依頼

2 M&A仲介業者や地域金融機関など、M&A支援機関との包括契約(着手に関する契約)

3 M&Aマッチングサイトへの登録

※申請者自身でM&Aに着手した場合は対象外

※M&A支援機関登録制度に登録されていない支援者による場合も対象

再チャレンジの内容

「廃業・再チャレンジ事業」で行う再チャレンジの内容について、補助対象となるためには下記のような条件があります。

公序良俗に反する事業などに該当しないこと

再チャレンジとして認められるために、以下に挙げるいずれの条件にも該当しないことが必要です。

1 公序良俗に反する事業

2 公的資金の使途として社会通念上不適切と判断される事業

地域の新たな需要の創造または雇用の創出に資する事業であること

再チャレンジは、地域の新しい需要の創出や雇用の創出にも寄与する新たな活動への取組みになります。以下のような取組を行うことが要件です。

1 新しい法人を設立する

2 個人事業主として新たな事業活動を開始する

3 自身の知識や経験を活かして、企業への就職や社会への貢献を目指す

 

補助対象事業

「廃業・再チャレンジ事業」の補助対象となる事業は、下記内容の取組です。

1 事業承継やM&Aによる廃業、経営者の交代

2 M&Aを機に承継者が行う経営革新などに伴う廃業(併用申請)

3 中小企業者等(その株主)や個人事業主が新たなチャレンジのために既存事業を廃業(再チャレンジ申請)

廃業の対象

廃業の対象は下記のパターンが存在します。

1 会社の廃業を行うための、廃業登記の実施、在庫の処分、建物や設備の解体、原状回復

2 事業の一部を廃業(事業撤退)するための、廃業登記、在庫の処分、建物や設備の解体、原状回復

補助事業期間

補助事業期間は、交付決定日から最長で2024年9月16日までとなります。公募回によって期間は異なりますので、詳細は各回の公募要領をご確認ください。

補助対象経費となる要件

補助事業を実施するために必要な経費のうち、下記1~3全ての要件を満たすものが補助対象経費となります。

1 使用目的が補助対象事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
2 補助事業期間内に契約・発注を行い支払った経費

―補助対象経費の契約・発注が交付決定日以降2024 年9月16日までの間であり、支払いまでが同期間内に完了している経費のこと

3 補助事業期間終了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額・支払い等が確認できる経費

※申請する企業自身や支配株主、株主代表、個人事業主が契約の主体となり支払った経費が補助対象経費となります。それ以外の株主が支払った経費は補助対象外となりますのでご注意ください。

補助対象経費

廃業支援費(注1) ・廃業に関する登記申請手続きに伴う司法書士等に支払う作成経費

・解散事業年度・清算事業年度・残余財産確定事業年度における会計処理や税務申告に係る専門家活用費用

・精算業務に関与する従業員の人件費

在庫廃棄費(注2) 既存の事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費
解体費 既存事業の廃止に伴う建物・設備等の解体費
原状回復費 借りていた設備等を返却する際に義務となっていた原状回復費用
リースの解約費(注3) リースの解約に伴う解約金・違約金
移転・移設費用(併用申請のみ計上可) 効率化のため設備等を移転・移設するために支払われる経費

(注1)廃業支援費の補助上限額は50万円です。

(注2)商品在庫等を売却して対価を得る場合の処分費は、補助対象経費となりません。

(注3)ファイナンスリース取引の解約に伴う解約金・違約金については、リース資産の売買に係る費用は補助対象経費となりません。

補助率・補助上限額

補助額は、以下の通りとします。ただし、経営革新事業や専門家活用事業との併用申請を行う場合は、各事業における補助率に準じます。

類型 補助率 補助下限額 補助上限額
廃業・再チャレンジ

(単独の申請)

2/3以内 50万円 +150万円以内
併用申請 1/2または2/3以内

まとめ

事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)は、M&Aによって現在事業を廃業、新たなチャレンジ(新規法人設立や新事業開始など)を行う際の資金負担を軽減してくれる補助金です。廃業・再チャレンジ事業のみで申請を行う「再チャレンジ申請(単独申請)」と、経営革新事業や専門家活用事業と並行して申請を行う「併用申請」で要件が異なりますので注意が必要です。審査の際には、再チャレンジを行うための事業廃業の必要性や廃業に向けた準備が計画的に行われているかなどが確認されます。交付申請はこれらの審査観点を念頭に入れて進めていく必要があります。