新事業進出補助金を申請しようとすると、書類の種類が多く「結局何を準備すればいいのか」と戸惑う方は少なくありません。
この記事では、必要な書類を一覧で整理し、各書類の取得方法・提出ルール・準備スケジュールまで解説します。「書類の名前は知っているがどう準備するかわからない」という段階から、次の具体的なアクションが見えるよう整理します。
なお、新事業進出補助金は2026年にものづくり補助金と統合され、新制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(新事業進出枠)」として引き継がれています。本記事は同枠の第1回公募要領(2026年7月17日改訂版)をもとに整理しています。提出書類の種類・様式は公募回によって変わる場合があるため、申請前には必ず最新の公募要領で最終確認してください。
参考:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト|第1回 公募要領
新事業進出補助金の概要(補助額・申請要件・採択率など)は別記事で解説しています。
目次
新事業進出補助金の申請に必要な書類一覧
準備するものは「事業計画(システムに入力するもの)」「全申請者が提出する添付書類」「条件によって追加される添付書類」の3つに分かれます。まず全体像を把握してから、自分に該当するものを確認してください。

事業計画は「添付書類」ではなくシステムへの入力
最初に押さえておきたいのが、事業計画の扱いです。事業計画は完成したファイルを添付するのではなく、電子申請システムに直接入力します(第1回公募要領P34)。
申請準備用として「事業計画テンプレート」が用意される予定ですが、2026年8月時点では未公開です(公募要領に「後日公開予定」と記載あり)。テンプレートはあくまで内容を準備するためのもので、電子申請時には別途システムへの入力が必要になります。
同様に「応募申請ガイド」「電子申請システム操作マニュアル」も後日公開予定とされています。テンプレートの公開を待つより、公募要領の審査項目を読んで内容を固めるほうが先に動けます。
全申請者が提出する添付書類
添付書類のうち、すべての申請者が提出するのは次の3種類です(公募要領P36)。
| 書類名 | 内容の概要 | 準備の種別 |
|---|---|---|
| 決算書 | 法人は直近3期分の貸借対照表・損益計算書など。個人事業主は青色申告決算書等 | 取得・収集 |
| 従業員数を示す書類 | 労働基準法に基づく労働者名簿の写し。公式サイトに参考様式(Excel)あり | 取得・収集 |
| 収益事業を行っていることを説明する書類 | 法人は直近の確定申告書別表一・法人事業概況説明書の控え | 取得・収集 |
事業計画の作成を除けば、必須の添付書類は既存の書類を取得・収集する作業が中心です。
なお、添付書類のファイル名には指定があり、「ファイル名確認シート」は公募要領P38〜39に表として掲載されています。別途ダウンロードする書類ではなく、また提出物でもありません。詳しくは後述します。
条件によって追加される書類
自分の状況に該当するものがあれば、追加で準備が必要です(公募要領P36〜37)。
| 条件 | 追加書類 | 注意点 |
|---|---|---|
| 金融機関等から資金提供を受けて補助事業を実施する | 金融機関による確認書 | 公式サイトの所定様式を使用。金融機関側の手続きに時間がかかるため早めの相談を(後述) |
| リース会社と共同申請する | リース料軽減計算書・リース取引に係る宣誓書 | 宣誓書は共同申請するリース会社が作成する |
| 再生事業者加点を希望する | 再生事業者であることを証明する書類 | 中小企業活性化協議会等の支援先が発行する |
| 地域別最低賃金引上げに係る特例の適用・加点を希望する | 要件確認書(所定様式)+該当する3か月分の賃金台帳の写し | 事業場内の全従業員分が必要 |
| 事業場内最低賃金引上げに係る加点を希望する | 要件確認書(所定様式)+賃金台帳の写し | 2025年7月分と応募申請直近月分の2種類が必要 |
| 経営革新計画加点を希望する | 経営革新計画承認書の写し | 承認書に計画期間の記載がない場合は経営革新計画書の写しも必要 |
| 研究開発費・試験研究費計上の加点を希望する | 別表六(十)の写し等 | 過去4年以内のもの。確認用フォーマットは後日公開予定 |
参考:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト|資料ダウンロード
加点項目は「書類が要るもの」と「要らないもの」で分かれる
第1回公募要領では加点項目が14種類設定されています(公募要領P43〜45)。準備の観点で重要なのは、加点項目には添付書類が必要なものと不要なものがあるという点です。
追加の添付書類が必要な加点(上の表に記載)
- 再生事業者加点
- 地域別最低賃金引上げに係る加点
- 事業場内最低賃金引上げに係る加点
- 経営革新計画加点
- 研究開発費・試験研究費計上に係る加点
追加の添付書類が不要な加点(認定やポータルサイトの登録で確認されるもの)
- パートナーシップ構築宣言(令和8年1月1日更新のひな形で公表していること)
- くるみん認定(次世代育成支援対策推進法)
- えるぼし認定(女性活躍推進法)
- 健康経営優良法人2026の認定
- (連携)事業継続力強化計画
- DX認定
- J-Startup / J-Startup地域版
- 新規輸出1万者支援プログラム(グローバル枠のみ)
- 日本の食輸出1万者支援プログラム(グローバル枠のみ)
書類が不要な加点も、申請締切日時点で要件を満たしている必要があります(公募要領P43)。認定の取得には時間がかかるため、加点を狙う場合は締切から逆算して動いてください。
申請書類の準備スケジュール目安
第1回公募のスケジュールは以下のとおりです(公募要領P34)。
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募開始 | 2026年6月29日 |
| 申請受付開始 | 2026年9月30日 |
| 申請締切 | 2026年10月30日 18:00 |
| 採択発表 | 2027年1月頃(予定) |
申請締切から逆算して、以下のスケジュールで準備を進めると余裕が生まれます。

| 時期 | 主な作業 |
|---|---|
| 締切の2ヶ月前 | 制度概要の把握・GビズIDプライムの取得手続き開始(マイナンバーカードなしの場合は特に早めに)・加点項目の取得可否の確認 |
| 締切の1ヶ月前 | 補助対象経費の確認・事業計画の作成方針決定・金融機関確認書の手配開始(必要な場合) |
| 締切の1ヶ月前〜2週間前 | 事業計画の作成・決算書や労働者名簿などの収集 |
| 締切の2週間前〜申請日 | 添付書類のファイル名確認・電子申請システムへの入力・事業計画の最終確認 |
準備で最もつまずきやすいのは、GビズIDの取得と事業計画の作成です。この2点を早めに着手することが、余裕ある申請につながります。
最初に動かすべき準備:GビズIDの登録
新事業進出補助金の申請は電子申請システムを通じた申請のみです。ログインにはGビズIDプライムが必要なため、書類収集を始める前に手続きを開始しておく必要があります。
GビズIDプライムの取得手順と注意点
GビズIDプライムは、行政手続き系サービスへのログインに使う事業者向けのIDです。取得方法は2種類あります。
| マイナンバーカードを使う方法 | 書類で申請する方法 | |
|---|---|---|
| 所要期間 | 24時間365日、速やかに処理(GビズID公式サイト記載) | 最大1か月(GビズID公式サイト記載) |
| 必要なもの | マイナンバーカード・GビズIDアプリ | 印鑑証明書(郵送) |
| 注意点 | 法人代表者本人のスマートフォン操作が必要 | 締切まで余裕を持って申請すること |
マイナンバーカードをお持ちの場合はアプリ経由が圧倒的に速いです。書類申請の審査期間は従来の最大2週間から最大1か月に変更されています(GビズID公式サイト記載)。書類申請を選ぶ場合は、書類収集より前に手続きを始めてください。
なお、公募要領には「GビズIDプライムアカウントの発行には1週間程度の期間を要します」との記載があります(P34)。ただし申請が集中すれば長くなる可能性があるため、最大1か月を見込んで動くほうが安全です。
電子申請システムの事前確認
GビズIDを取得したら、電子申請システムにログインできることを確認しておきましょう。第1回公募の申請受付開始は2026年9月30日です。申請画面の構成や入力項目を事前に把握しておくと、締切前の作業がスムーズになります。
採択を左右する重要書類:事業計画
添付書類は取得・収集が中心ですが、事業計画は内容を自社で考えて作成する必要があります。審査の合否に最も影響する部分でもあります。
事業計画テンプレートは2026年8月時点で未公開です。ただし、公募要領には「事業計画書作成のポイント」と審査項目が具体的に示されており、テンプレートを待たなくても内容の検討は始められます(公募要領P40〜41)。
事業計画に記載が求められる主な内容
公募要領の「事業計画書作成のポイント」(P40)では、次の内容を示すことが求められています。
- 経営理念・経営戦略を踏まえた中長期ビジョンと、その中での本事業の位置づけ
- 継続的に売上・利益を確保できる市場規模と、その市場の成長見込み
- 外部環境・内部環境の分析に基づく、競合他社と比べた明確な優位性(差別化)
- 実施体制・スケジュール・財務状況から見た事業の実現可能性
- 付加価値額目標値・1人当たり給与支給総額目標値・事業場内最低賃金目標値の算出根拠
- 新事業進出枠の場合、過去に製造等した実績がない製品等に取り組むこと、既存事業と新規事業の顧客層が異なること
記載内容は定性的・定量的情報を用いて、具体的な理由や根拠を示しながら詳細に書くことが求められます。図表や写真の使用も認められています。
なお、事業内容に直接関係のない個人情報(社長・役員・従業員・顧客の顔写真等)は掲載しないよう明記されています。
採択されやすい事業計画のポイント
公募要領の審査項目(P41〜42)を読むと、事業計画では「何をやるか」だけでなく「なぜこの事業を自社がやるのか・市場のどこを狙うのか・数字でどう実現するのか」が問われていることがわかります。
書いていて詰まりやすい箇所では、次の問いを自分に投げかけながら整理すると内容が固まりやすくなります。
- これまでの事業活動との一貫性はあるか?(審査項目「経営戦略との整合性」)
- 誰に・何を・どのように提供し、なぜ選ばれるのか?(審査項目「事業の実現可能性」)
- 設定した目標値は、どんな根拠で実現できるのか?(審査項目「事業の実現可能性」)
事業計画は準備に最も時間がかかります。早めに着手し、認定支援機関(中小企業庁が認定した申請支援ができる税理士・金融機関・商工会議所など)に内容を確認してもらうことで精度が上がります。
各書類の取得・準備方法(公的書類・財務書類)
以下では、公的書類と財務書類について取得先と準備方法をまとめます。
ファイル名確認シートの見方と使い方
添付書類には決められたファイル名があります。名前の付け方は「ファイル名確認シート」で確認しますが、これは公募要領P38〜39に掲載されている表です。別途ダウンロードする書類ではありません。
シートには添付書類が①〜⑪の番号付きで列挙され、それぞれ付けるべきファイル名(例:「決算書等(申請者名)」「労働者名簿の写し(申請者名)」)が示されています。準備した書類から順に照らし合わせ、提出直前に全項目を確認する使い方が基本です。
「自分が何を準備すればよいか」を整理するためにも、準備を始めた段階で公募要領の該当ページを開いておくことをお勧めします。
参考:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト|第1回 公募要領
決算書・財務書類の準備
法人は直近3期分の以下の書類を準備します。
- 貸借対照表(特定非営利活動法人は活動計算書)
- 損益計算書
- 製造原価報告書(従来から作成している場合のみ)
- 販売管理費明細(従来から作成している場合のみ)
3期分を提出できない場合:今期までの決算書をすべて添付します。創業から3期を経ていない場合もこの扱いになります。
提出時の注意点:1期分の決算書類を1つのファイルにまとめる必要があります。3期分を1ファイルにまとめることはできません。
個人事業主の場合は、青色申告であれば直近3期分の青色申告決算書のうち損益計算書・損益計算書の内訳・貸借対照表(4ページすべて)を準備します。簡易簿記の場合は直近3期分の損益計算書(1ページ目)と貸借対照表(4ページ目)です。白色申告の場合は収支内訳書を準備します。
収益事業を行っていることを説明する書類
法人は以下を用意します。
- 直近の確定申告書別表一の控え
- 法人事業概況説明書の控え
個人事業主は、直近の確定申告書第一表と所得税青色申告決算書の控え(白色申告の場合は収支内訳書の控え)を用意します。
電子申告をしている場合:電子申告の日時・受付番号が記載されている必要があります。e-Taxのメッセージボックスから送信結果をダウンロードして添付してください。
紙申告の場合:収受日付印の押印があるもの、または納税証明書(その2・所得金額用で事業所得金額の記載があるもの)の提出が必要です。
従業員数を示す書類(労働者名簿)
労働基準法に基づく労働者名簿の写しです。申請時点のものを提出します。
公式サイトに参考様式(Excel)が公開されているため、名簿の形式に不安がある場合はこれを使うのが確実です。
参考:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト|資料ダウンロード
金融機関による確認書は早めに動く
金融機関等から資金提供を受けて補助事業を実施する場合は、金融機関による確認書が必要です。事業計画について金融機関等の確認を受けていることを示すもので、公式サイトの所定様式(Word)を使用します。
公募要領に取得期間の定めはありませんが、当事務所の実務では、依頼から発行まで2〜4週間かかるケースがあります。金融機関の内部手続きを経るため、自社の都合だけでは短縮できません。資金調達を予定している場合は、事業計画の骨子が固まった段階で早めに相談してください。
提出時のルールと不備を防ぐ注意点
書類の内容に問題がなくても、提出形式のミスで不備扱いになることがあります。
ファイル名・ファイル形式のルール
添付書類は、公募要領P38〜39の「ファイル名確認シート」に従って決められたファイル名を付ける必要があります。
具体的なファイル形式(PDF指定の有無など)の詳細は「応募申請ガイド」に記載される予定ですが、2026年8月時点では未公開です。公開され次第、必ず確認してください。
決算書については公募要領に明記があり、1期分を1ファイルにまとめる必要があります。
参考:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト|資料ダウンロード
提出前のチェックリスト
提出前に以下を確認しておくと不備を防ぎやすくなります。
- 決算書は期ごとに別ファイルになっているか(3期分まとめて1ファイルはNG)
- 決算書は直近3期分そろっているか(そろわない場合は今期までの全期分か)
- 労働者名簿は申請時点のものか
- 電子申告の書類に受付番号・日時が記載されているか
- ファイル名が公募要領のファイル名確認シートどおりか
- 条件別追加書類(金融機関確認書・賃金台帳・経営革新計画承認書など)の準備が漏れていないか
- 加点項目は申請締切日時点で要件を満たしているか
事業計画・書類準備で詰まったら:専門家活用の判断基準
公的書類の収集や財務書類の準備は、自社で対応できることがほとんどです。一方、事業計画の作成については「書いたことがない」「審査項目に対してどの水準が求められるかわからない」という場合に、専門家のサポートが有効なシーンがあります。
申請は必ず申請者自身が行う
専門家に相談する前に、公募要領に明記されている2つのルールを押さえておいてください(公募要領P34)。
1. 申請は申請者自身が行う
入力情報については、申請者自身がその内容を理解し、確認したうえで、申請者自身が申請する必要があります。電子申請システムには代理申請の委任関係を管理する機能がありません。正当な事由なく申請者自身による申請と認められない場合は不採択となり、採択後に発覚した場合は採択取消または交付決定取消となります。
2. 支援を受ける場合は支援者の申告が必須
事業計画作成支援者がいる場合は、電子申請システム内に「事業計画作成支援者名」「支援内容」「報酬(予定)額」「契約期間」を記載する必要があります。複数の支援者から支援を受ける場合はすべて入力が必要です。支援を受けているにもかかわらず必要な入力がなされていない場合は、不採択・採択取消・交付決定取消となります。
つまり、専門家の支援を受けること自体は認められていますが、支援の事実を隠すことは認められません。相談先を選ぶ際は、この申告に協力する姿勢があるかどうかを確認してください。
なお、事業計画書の作成支援者に対する経費は、補助対象の専門家経費には含まれません(公募要領P28)。
相談を検討したい場面
特に次のような場合は、行政書士・中小企業診断士・認定支援機関への相談を検討してみてください。
- 公募要領の審査項目を読んでも、どこまで書けばよいかイメージできない
- 付加価値額や給与支給総額の目標値を、根拠つきで組み立てられない
- 申請締切まで時間が少なく、自力での仕上げが難しい
認定支援機関(税理士・金融機関・商工会議所などの中小企業庁認定機関)は、補助金申請を支援する実績を持った機関が多くあります。初回相談を無料で受け付けている機関もあるため、まず相談だけしてみることからでも動き始めやすいです。
まとめ
新事業進出補助金の申請に必要な書類を整理します。
事業計画
電子申請システムに直接入力する(添付ファイルではない)。事業計画テンプレートは2026年8月時点で未公開のため、公募要領の審査項目をもとに内容を固める
全申請者の必須添付書類
決算書(直近3期分)・従業員数を示す書類(労働者名簿の写し)・収益事業を行っていることを説明する書類(確定申告書別表一・法人事業概況説明書の控え等)
条件別追加書類
金融機関による確認書(資金提供を受ける場合)・リース関連書類(共同申請の場合)・再生事業者の確認書/賃金台帳/経営革新計画承認書/別表六(十)の写し(各加点を希望する場合)
準備の優先順位
- GビズIDプライムの取得(書類申請では最大1か月かかるため最優先)
- 事業計画の作成(審査内容を直接左右するため、早めの着手が重要)
- 決算書・確定申告書類・労働者名簿などの収集
- 加点項目の確認(申請締切日時点で要件を満たしている必要がある)
書類の準備に不安がある場合や事業計画の作成で行き詰まった場合は、認定支援機関への相談も選択肢のひとつです。その際は、支援者名・報酬額を電子申請システムに申告する必要がある点を忘れないでください。