省力化補助金(正式名称:中小企業省力化投資補助金)は、人手不足に悩む中小企業・個人事業主が、IoTやロボットなどの省力化設備を導入する際に費用の一部を国が補助する制度です。
この記事を読むと、以下の3点が分かります。
- 自分の事業がこの補助金の対象になるかどうか
- カタログ注文型と一般型のどちらが自社に向いているか
- いつまでに申請すればよいか
「公募要領は長くて読む気になれない」という方も、この記事で初期判断の材料をそろえてください。
※本記事は2026年8月時点の情報です。一般型は第8回公募要領(2026年8月)、カタログ注文型は2026年3月19日版の公募要領に基づいています。
目次
省力化補助金(中小企業省力化投資補助金)とは
経済産業省の中小企業庁が推進し、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する補助金制度です。
制度の目的は、次の3つです。
- 人手不足の解消
- 労働生産性の向上
- 賃上げの促進
補助の対象となる設備は、IoT機器・ロボット・AI搭載システムなど「省力化効果が見込める設備・システム」全般です。自動搬送ロボット・発注管理システム・配膳ロボット・顔認証システムなどが該当します。
省力化補助金には「カタログ注文型」と「一般型」の2種類があります。この2つは補助上限額が違うだけでなく、申請できる事業者・満たすべき要件・報告義務の期間まで異なります。 記事の後半では類型ごとに分けて説明しますので、まず自社がどちらを検討するかを決めてから読み進めてください。
省力化補助金の対象事業者
省力化補助金の対象となる事業者は以下のとおりです。
| 事業者区分 | 規模の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 中小企業(法人) | 業種別の上限以内(中小企業基本法の定義に基づく) | — |
| 小規模事業者 | 製造業・建設業・運輸業:20人以下/商業・サービス業:5人以下 | 一般型では補助率が2/3に優遇(中小企業は1/2) |
| 個人事業主 | 業種制限なし | 従業員の雇用状況により扱いが異なる(下記) |
業種の制限はなく、製造業・小売業・飲食業・サービス業など幅広い業種で活用されています。
従業員が0名の場合は類型によって扱いが変わる
見落としやすいのがここです。ひとり社長・一人親方など従業員を雇用していない事業者は、一般型には申請できません。
- 一般型:応募申請時点で従業員数が0名の場合、および1人当たり給与支給総額の対象となる従業員が0名の場合は申請できません(第8回公募要領1-5・2-2)。一般型の基本要件に「1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上」があり、対象となる給与が存在しないためです
- カタログ注文型:常勤従業員がいない事業者も申請自体は可能ですが、追加審査(契約書等の証憑提出)が必要になります
なお一般型では、常勤従業員がいない場合、大幅賃上げによる補助上限額の引き上げ・最低賃金引き上げによる補助率の引き上げのいずれも適用されません。
対象外となる主なケース
- みなし大企業:大企業が議決権の過半数を保有するなど、実質的な支配権を持っている場合。個人事業主や大企業グループに属していない独立した中小企業であれば、通常は該当しません。
- 新規事業への設備導入:原則として既存事業の省力化が対象です。事業開始直後は対象外になる可能性があるため、公募要領で確認してください。対象外と判断された場合でも、新事業進出補助金など別の補助金で対応できることがあります。どの補助金が使えるかを整理したい場合は、専門家への相談が近道です。
カタログ注文型と一般型の概要・違い
2種類の類型を比較すると以下のとおりです。
| 項目 | カタログ注文型 | 一般型 |
|---|---|---|
| 対象設備 | 事前登録済みの製品から選択 | 自社向けカスタム設備・システム |
| 補助上限額 | 最大1,000万円(大幅賃上げ時1,500万円) | 最大8,000万円(大幅賃上げ時1億円) |
| 従業員0名の事業者 | 申請可(追加審査あり) | 申請不可 |
| 基本要件 | 労働生産性の年平均成長率3.0%以上 | 4つの要件(後述) |
| 効果報告の期間 | 3年間(3回) | 5年間(毎年) |
| 手続きの複雑さ | 比較的シンプル | 事業計画書の作成が必要 |
| 公募形式 | 随時受付 | 期別公募(年数回) |
どちらを選ぶかの判断基準は、後述の「選び方」で詳しく解説します。
省力化補助金の補助率・補助上限額と申請要件
申請要件は類型ごとにまったく別の構造になっています。 「省力化補助金の要件」としてひとまとめに理解すると誤ります。
カタログ注文型の補助率・補助上限額
- 補助率:1/2以下(省力化製品の購入価格が製品ごとに設定された補助上限額の2倍を上回る場合、補助率は1/2未満になります)
| 従業員数 | 補助上限額 | 大幅な賃上げを行う場合 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 500万円 | 750万円 |
| 6〜20人 | 750万円 | 1,000万円 |
| 21人以上 | 1,000万円 | 1,500万円 |
補助額が25万円未満となる申請はできません(借用に要する経費を補助対象とする場合を除く)。また製品本体価格は単価50万円以上である必要があります。少額の機器を1台だけ導入したいケースでは使えない点に注意してください。
カタログ注文型の要件
基本要件は労働生産性の目標だけです。
- 補助事業終了後3年間で毎年、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)3.0%以上向上させる事業計画を策定すること
一般型にある「事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上」という要件は、カタログ注文型にはありません。
賃上げが関わるのは、補助上限額を引き上げる場合だけです。以下の2つを両方とも、補助事業実施期間終了時点で達成する見込みの計画を立てた事業者が対象になります。
- 事業場内最低賃金を申請時と比較して3.0%以上増加させること
- 給与支給総額を6%以上増加させること
このとき、申請時に賃金引き上げ計画を従業員に表明していることが必要です。正当な理由なく達成できなかった場合は補助額が減額されます。
一般型の補助率・補助上限額
補助率は事業者の区分によって異なります。
- 中小企業:補助対象経費の1/2(最低賃金引き上げに係る特例の適用を受ける場合は2/3)
- 小規模企業者・小規模事業者・再生事業者:補助対象経費の2/3
| 従業員数 | 通常の上限額 | 大幅賃上げ達成時の上限額 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
一般型の基本要件は4つ
一般型は、以下をすべて満たす3〜5年の事業計画を策定する必要があります(第8回公募要領1-5)。
- 労働生産性の年平均成長率+4.0%以上増加:事業計画期間において毎年、申請時と比較して労働生産性をCAGR4.0%以上向上させること
- 1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上増加:設定した目標値を交付申請時までに全従業員または従業員代表者・役員へ表明することが必要です。未達の場合は達成率に応じて補助金の返還を求められます
- 事業場内最低賃金が事業実施都道府県の最低賃金+30円以上:事業計画期間中、毎年この水準を維持します
- 一般事業主行動計画の公表(従業員21名以上の場合のみ):交付申請時までに、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を厚生労働省「両立支援のひろば」に公表することが必要です
4つ目は見落とされやすい要件です。「両立支援のひろば」への掲載には2週間程度かかるため、従業員21名以上の事業者は早めに準備してください。
このほか、省力化指数の算出・投資回収期間の提出・付加価値額の増加・オーダーメイド設備の導入といった要件もあります。汎用設備を単体で導入するだけの事業は対象になりません。
一般型の大幅賃上げ特例
補助上限額の引き上げを受けるには、基本要件に加えて次の2つを満たす必要があります。
- 1人当たり給与支給総額を、基本要件の年平均成長率+3.5%以上に加えてさらに+2.5%以上(合計で年平均成長率+6.0%以上)増加させること
- 事業場内最低賃金を事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準とすること
達成条件の難易度が高いため、まずは通常上限を前提に資金計画を立てることをおすすめします。
カタログ注文型と一般型の選び方
「カタログで使いたい製品が見つかればカタログ型、見つからなければ一般型」が基本的な判断の出発点です。ただし前述のとおり、従業員が0名の事業者は一般型を選べません。

カタログ注文型が向いているケース
- 導入を検討している製品がカタログに登録されている
- 手続きのシンプルさや申請スピードを重視したい
- 投資規模が1,500万円以内に収まる
例えば、「人手が足りず、レジ業務を自動化したい小売店」や「在庫管理に手間がかかりすぎている倉庫業者」などが活用しやすい典型例です。
申請書類の作成は販売事業者がサポートしてくれるため、事業者単独で書類を揃える負担が少ない点もメリットです。まずは公式サイトのカタログで、自社が検討している製品が登録済みかどうかを確認することがスタートです。
一般型が向いているケース
- 自社の業種・工程に特化したカスタム設備や専用システムが必要
- 投資規模が大きい(1,500万円超を想定)
- 業務フロー全体を見直すシステム構築を検討している
例えば、「複数の製造工程をまとめて自動化したい製造業」や「自社の受発注業務に特化したシステムを一から構築したい卸売業」などが向いています。
一般型は申請準備に数ヶ月かかることも珍しくありません。検討している場合は、行政書士に早めに相談することをおすすめします。
省力化補助金の申請スケジュール(2026年8月時点)
※詳細・最新情報は公式サイトでご確認ください。
カタログ注文型
随時受付中です。公募要領は「本事業は、令和9年3月末頃までの間に補助事業の申請を受け付けるものとする」としており、2027年3月末頃が申請受付の期限の目安になります(カタログ注文型公募要領P5)。
ただし、カタログへの製品登録は「公募受付期間終了の半年前程度まで」とされているため、新しい製品がカタログに追加されるのは2026年9月末頃までと見込まれます。検討中の製品がまだ登録されていない場合は、早めに販売事業者へ確認してください。
一般型
年数回の期別公募制です。第7回公募は2026年7月31日で締め切られており、現在の申請機会は第8回になります。
| 項目 | 第8回公募 |
|---|---|
| 公募開始(公募要領の公開) | 2026年8月18日(火)公開済み |
| 申請受付開始 | 2026年9月中旬(予定) |
| 申請締切 | 2026年10月中旬(予定) |
| 採択発表 | 2027年2月上旬(予定) |
公募要領はすでに公開されています。 申請受付開始・締切・採択発表は「予定」の段階で、確定日はまだ公表されていません。申請受付が始まるまでに事業計画書を仕上げておけるかどうかが分かれ目になります。制度全体は2029年度まで継続が予定されており、今後も順次公募が行われます。
申請の流れ(ステップ概要)
まず最初にやること:GビズIDの取得
GビズIDは申請に必須のアカウントです(個人事業主も取得できます)。取得方法によって所要期間が大きく異なります。
- マイナンバーカードを使うオンライン申請:24時間365日、速やかに処理されます
- 書類申請(印鑑証明書の郵送):審査に最大1か月かかります
書類申請を選ぶ場合は特に、申請を検討し始めたら早めに手続きを進めてください。GビズIDさえ取得しておけば、申請準備が整い次第すぐに動き出せます。
申請から補助金受け取りまでの流れ
- GビズIDプライムアカウントを取得する
- 省力化製品・販売事業者を選定する(カタログ型)/設備・事業計画を策定する(一般型)
- 応募申請(公募期間内に電子申請システムから提出)
- 採択通知
- 交付申請
- 交付決定(設備の発注・契約はここから)
- 設備を導入し、補助事業を実施する
- 実績報告
- 補助金の交付
- 効果報告(カタログ型は3年間で3回、一般型は5年間、毎年)
カタログ注文型では販売事業者と共同で申請を進めます。一般型は事業者が自社で申請する形が基本です。
申請前に知っておくべき注意点
交付決定前に設備を購入すると補助対象外になる
補助金の対象は交付決定後に発注・契約した設備に限られます。検討段階で先に設備を購入してしまうと、その費用は補助の対象になりません。
注意したいのは、採択通知や交付申請の段階ではまだ発注できないという点です。採択は「補助金交付の候補になった」状態にすぎず、交付決定通知が届いてはじめて発注できます。「採択されたから発注しよう」は典型的な失敗パターンです。
効果報告の義務は類型で期間が違う
設備導入後、労働生産性の向上目標の達成状況を報告する義務があります。期間は類型で異なります。
- カタログ注文型:補助事業終了後3年間、毎年(3回目の効果報告を提出するまでが事業計画期間)
- 一般型:事業計画期間の1年目が終了してから、最初の4月より5年間、毎年
一般型で紛らわしいのが、事業計画期間(3〜5年)と効果報告の期間(5年間)が別物である点です。事業計画を3年で設定しても、効果報告の義務は5年間続きます。あわせて事業場内最低賃金の確認のため賃金台帳の提出も求められます。
期限までに効果報告が提出されない場合、交付決定が取り消されることがあります。「補助金をもらったら終わり」ではない点を把握しておいてください。
賃上げ目標の未達には返還が伴う(一般型)
一般型では、1人当たり給与支給総額の目標が未達の場合、達成率に応じて補助金の返還を求められます。年平均成長率がゼロまたはマイナスの場合は全額返還です。事業場内最低賃金の要件が未達の場合も、補助金額を事業計画年数で除した額の返還が求められます。
ただし、付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は、返還を求められません。
【一般型】事業計画書の質が採択を左右する
一般型では、「なぜこの設備の導入が省力化につながるのか」を数値とロジックで示した事業計画書の提出が必要です。「設備を入れます」という記載だけでは不十分で、省力化指数・投資回収期間・付加価値額といった具体的な数値の提出が求められます。
計画書の作成が難しいと感じる場合は、行政書士への相談を検討してください。
まとめ:省力化補助金を活用するための次のステップ
- 対象者:中小企業・小規模事業者・個人事業主(既存事業の省力化が対象)。ただし従業員0名の事業者は一般型に申請できません
- 補助額の目安:カタログ型は最大1,000万円(大幅賃上げ時1,500万円)、一般型は最大8,000万円(大幅賃上げ時1億円)。いずれも従業員数で変動します
- 要件の違い:カタログ型の基本要件は労働生産性3.0%以上のみ。一般型は労働生産性4.0%以上・給与支給総額3.5%以上・事業場内最低賃金+30円以上・一般事業主行動計画の公表(21名以上)の4つ
- 効果報告:カタログ型は3年間、一般型は5年間(事業計画期間3〜5年とは別)
- スケジュール:カタログ型は随時受付(2027年3月末頃まで)、一般型は第8回公募が2026年10月中旬締切の予定
この記事を読んで「使えそう」と感じた方は、今の状況に合わせて次の行動を取ってください。
自分の事業が対象になるか分からない場合は、行政書士に相談してください。対象かどうかの初期判断と、カタログ型・一般型のどちらが向いているかの確認、その後の書類作成までワンストップで対応してもらえます。
詳細を知りたい場合は、公式サイトで公募要領を確認してください。申請要件・対象設備・最新スケジュールをまとめて確認できます。
参考:資料ダウンロード(一般型)|中小企業省力化投資補助金
参考:資料ダウンロード(カタログ注文型)|中小企業省力化投資補助金